建築家インタビュー/Vol.02 藤岡 龍介(藤岡龍介+藤岡建築研究室)

「家づくりフォーラム」に参加している建築家たちを、京都造形芸術大学の学生たちが訪問しインタヴューを行ないます。
建築家の生き生きとした言葉で彼らの思いや活動を語っていただいています。

インタヴュアー/市原あゆみ、神園貴史、横山カレン、北村依里香(京都造形芸術大学環境デザイン学科2回生)

─北村:町家の改修など、藤岡さんが改修工事のときに心がけていることがあれば教えてください。

藤岡:町家の形とか構造体、柱・梁・小屋、フレームをできるだけ活かすというか、元へ戻しながら活かしていくというか。昔の建物っていうのはその時代時代で生活が変わったり用途も変わったり、改修が何回もされてる。フレームが壊れてるとか増築して変な形になってるとかいうのがあってね。できる限り元のフレームをひとつの構造体として戻しながら、昔の空間に現代の風とか光とかを感じながら使えるような形に活かしていければいいなと。住宅にしても店舗にしても。

─市原:飲食店とかだと元々住宅の要素になかった構成が入ってこなければいけないので、改修時に無理をして建物の寿命を縮めているという話を聞いたことがあるんですが、藤岡さんが別用途に改装するときに心がけていることはありますか?

藤岡:元の形が分かるような空間構成や改修をしていきたいなというのが一つと、解体していくと色んな元の形の痕跡が出てくるので、店舗なんかをやった時にそれが邪魔にならないようなものであれば復原するとか、或いは厨房なんかを造る場合には用途にある程度合わせた形にはなっていますが、元の形に戻せるようにしていければいいかな、と。今の時代っていうのは用途が30年経ったら変わったりするでしょ。だからできるだけ元に戻せるような形でと思っていますけれども、やはりどうしても店舗とか入ると使えば使うほど痛みは出てくるのでね。それはもうしょうがないなと思うけれど、できるだけ日本人の精神とか心得である、朽果てるまで材木にしても瓦にしても使い続けるっていう考えを基本的に大切にしていきたいなと。

─北村:現代の建築で鉄筋コンクリートとかで建てられたビルやマンションの街に昔の日本建築が肩身狭そうに存在している今の日本の現状を見てどう思いますか?

藤岡:それは一つの世の中の流れで、正しくは時代性やね。回る経済というか、昔から見たらすごく激しいよね。時間の単位が短くなった激しい時間の流れの中での一つの建築の流れなんやろうなと思って。時代性が反映されているんと違うかな。残し方とか生かし方とか造り方とかいろいろあるけど、戦後の経済の発展で日本の伝統建築である木造建築があまり良くないということで、木造よりも鉄筋、木造よりも鉄骨。どういったところで歯車が変わったのかわからないけれども、そういう風に先人達が変えていったからね。今は逆にそういうのがなくなって、大切にしないといけないな、ていうのが出てきたんじゃないかと。

─市原:今残っている町家を今後また100年もたせるとしたらどうしていけばいいと思いますか?

藤岡:昔の町家は例えば、石、木、土、紙などで出来ている訳で、そういった事を小学生、中学生が知っているかと言えば、まったく知らないと思う。そういった教育もしなければならない。そこに魅力があるという事を認識できるようにならなくてはならなし、それを作ったり、メンテナンスや修理をしていくような職人さん、大工さんもいるしね。

奈良町紀寺借家(奈良町宿「紀寺の家」)六畳間と八畳間の和室。机は昔お茶の葉をもむ作業用に使われていたもの。

─市原:そういった伝統工法を大切にするというのは水沢工務店で務められていた影響もあるんでしょうか?

藤岡:それはないですね。水沢工務店は現代和風や現代数寄屋っていうのを専門的にやってる会社だけれども、関西のような伝統工法というよりかは現代工法で建てていて、割と数寄屋なんかは、東北、京都、奈良、広島でも茶室なんかには地域性が出てないと思う。民家は別として、現代の住宅でも地域性なんていうのありません。私が働いていた30数年前の時代の話だけど。
当然、現代的な鉄筋コンクリートや鉄骨の建物も作っていたんだけど、あまり地域性の見えないもの作っていたので、奈良に戻ってきた私としては、地域性というものを出していきたいなとか思うようになったんです。長野の松本に降幡廣信さんという先生がいて、その人は南安曇郡三郷村という所から、地域性というものを中央に向かって発信していました。その人に惹かれるものがあって、松本のほうに行った時に、本棟造りの、文化財にもなっている堀内家という民家を見ました。大きな屋根の螻羽(けらば)から壁面まで2メートルくらい軒が出て、その下に構造体のフレーム意匠ががっちり見えて、まるで鷹が羽を広げて降りたような、彫りの深い民家で、その伝統工法の洗練されたデザインの美しさに当時衝撃を受けました。そこから南にいくと街道筋沿いに本棟造り建物がずっと並んでいる郷原地区という場所と中山道のせがい造りという軒の深い建物があって、それらが混在して通りを形成して、これは関西ではありえない景観だと思ったんです。けれども、奈良の街を見返してみると大和棟という素晴らしい民家がありました。学生時代も写真などでは知っていたけどぴんと来なかったんですが、堀内家や中山道の街道を見たときに奈良に戻ったらそういう事したいと思い、こうして現在に至っている訳です。

奈良町紀寺借家(奈良町宿「紀寺の家」)昔のままに戻すと畳の部屋だが、長期滞在できるようにキッチンを設置。棚も修理または古材で作ったもの。

奈良町紀寺借家(奈良町宿「紀寺の家」)庭は元々ある橙の木を生かす。塀は町家の妻壁に奈良垣を貼ってあり、心地いい庭。

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藤岡龍介(ふじおかりゅうすけ)

藤岡建築研究室主宰
1952年奈良県生まれ。
1975年近畿大学理工学部建築学科卒業後、
東京・水澤工務店、松本・降幡建築設計事務所を経て
1985年奈良に戻り藤岡建築研究室を設立
現在に至る。
2002~2007年近畿大学非常勤講師
□受賞歴
 ●第1回豊の国木造住宅賞 優秀賞
 ●第5回豊の国木造住宅賞 最優秀賞
 ●第7回奈良市建築文化省 奨励賞
 ●平成9年三重県上野市地域住宅賞(HOPE賞)市長賞
 ●第4回奈良県大和高田市都市景観建物デザイン賞
 ●「2007年度E・家・くらし住まいの設計コンテスト」最優秀賞
 ●第13回奈良県景観デザイン賞 審査委員長賞
 ●第5回木の建築賞 など

連絡先

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