建築家インタビュー Vol.01 阿久津 友嗣(阿久津友嗣事務所)

「家づくりフォーラム」に参加している建築家たちを、京都造形芸術大学の学生たちが訪問しインタヴューを行ないます。
建築家の生き生きとした言葉で彼らの思いや活動を語っていただいています。

インタヴュアー/市原あゆみ、海谷香里、神園貴史、横山カレン(京都造形芸術大学環境デザイン学科2回生)

─海谷:お施主さんと話し合ってその人の今までの人生も受け入れるような住宅を設計されてますが、お施主さんとどういう風に人間関係を作っていくんですか?

阿久津:あくまでもお施主さんと設計者との関係ではあるけれど、とにかく出来るだけ要望は言ってもらってます。言ってもらった要望を全部一旦咀嚼して組み立て直します。僕はそういうやり方です。よく例えるのは、柔道で技をかける時に動かない人を動かそうとしても動かないけど、向こうからちょっとでも動いてくれたら思い切って投げられるじゃない。だからプランのテーマになるきっかけはお施主さんの一言が多いんですよ。

─海谷:生活の軸となるところは阿久津さんが提案するということですよね?

阿久津:いくつか作り方の引き出しはあるからね。ただ僕が強引に押し付けてもうまくいかないと思う。 その人の思い入れと僕の引き出しをうまく使って、要望そのままじゃなく3倍ぐらいにしてお返しするようにしています。一番良い例なのがこの家(*7)で、一階に大きい半戸外デッキがある。ある意味無駄といえば無駄かもしれないけれど、昔一年程海外を旅したとき、ヨーロッパは外部と内部だけで中間領域がないと思ったことがあり、ヨーロッパにはない日本独特の軒下の空間は昔からいいなと思っていたんです。建て主の奥さんが最初の要望のなかで奈良のお店の写真を何軒か持ってこられて「こういう軒下のところが良いですね」っていう話をされたんですよ。いつもならこういう空間ってもったいないから部屋にしてって言われるんですけど、最初からこういうのが良いって言ってもらったから「これはしめた」と思って(笑)、一階を一周全部軒下空間にしました。

(*7)

─横山:やっぱり建てる人から積極的にきてもらった方がやりやすいですか?

阿久津:そうだね。何かヒントをくれると、それがある時自分の中で形になって提案できるんです。もちろんプロだからこっちが決めることはあるけれど、対話しながら作っていくっていう場合が多いね。さっき言った様に、お施主さんが言った通りというよりは自分でちょっと噛み砕いて、出来ればもっと良い方にしてあげたい。

要望っていうのは、全体の構造の話からテーブルの高さをどうしてくれとか色々なんだけど、僕はそれでいいと思っていて、それを交通整理するのが僕らの役目だと思う。どんな家でも大体予算の関係とかで100%要望通りにはなかなか出来ないんだけど、例えば5つやりたいことがあったとすると2つぐらい諦める。実は家の設計において諦めることってものすごく重要なことだし、ものすごいエネルギーがいる。お施主さんも全部できると思ってたのに出来なくなるから。でもそれをうまく交通整理すると無駄がなくなって、諦めた分だけ残りの部分が良くなってくる。例え1千万円の家だとしても、やりたいことを諦めていって1個だけ残ったとすると、その1個に関しては1億円の家よりも良くなる可能性がある。なんかそういう家づくりをしたい。自分の家に対して何がやりたいか分からなくても、イエスかノーか言える建て主の方がやりやすいかな。基本的に最終的な決定はお施主さんにやってもらった方がいい。こっちが「これでいきましょう。」「これでどうですか?」って言って、お施主さんが「あ、いいですね。」っていうふうに。こういうステップを踏んでいくと、お施主さんにとっても自分で自分の生活をかたちにした家になるから、できてから使いにくいっていうのは殆ど無くなってくる。

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阿久津友嗣(あくつともつぐ)

□プロフィール
 1958年   栃木県生まれ
 1981年   法政大学工学部建築学科卒業
 1984〜85年 ヨーロッパ旅行
 1985〜87年 REA建築工房
 1987年   あくつ設計所設立
 1992年〜  阿久津友嗣事務所に改称
 2004年〜  大阪市立大学非常勤講師
□おもな受賞
 「北畠邸」で第15回住まいのリフォームコンクール部門優秀賞
 「赤穂の住宅」で第6回赤穂市都市景観賞
 「つなね2-01」で第49回大阪建築コンクール特別賞 
  2005年 つくば田園都市コンセプト住宅設計競技2等入賞
 「生駒の住宅」で第53回大阪建築コンクール大阪府知事賞

連絡先

阿久津友嗣事務所
一級建築士事務所
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