建築家インタビュー Vol.01 阿久津 友嗣(阿久津友嗣事務所)

「家づくりフォーラム」に参加している建築家たちを、京都造形芸術大学の学生たちが訪問しインタヴューを行ないます。
建築家の生き生きとした言葉で彼らの思いや活動を語っていただいています。

インタヴュアー/市原あゆみ、海谷香里、神園貴史、横山カレン(京都造形芸術大学環境デザイン学科2回生)

─海谷:今日はお忙しい中お時間ありがとうございます。家づくりフォーラムに参加されている建築家さんの紹介ということで色々と質問を考えて来ましたので、よろしくお願いします。まず初めに阿久津さんの事務所HPで過去の作品などを拝見させて頂いて、「生活から考え直す住まい」という言葉が印象に残ったんですが、具体的にはどういった事なんでしょう?

阿久津:講演をするといつもこの本の事(*1)を言うんですけど、すごく面白い本でいろんな国の普通の人の家にある家具を全部外に出して写真を撮ってるんです。例えばこのブラジルの人(*2)、結構家具とかはあるけれど陽気な家族と家とがそんなに違和感ないよね?家と人とがすごく合ってると思わない?でも日本だとこうなるわけ(*3)。びっくりするよね。こうやってみないと日本がこんな変な国だってことに気づかないんだ。

この本が出たのは20年近く前だけど、家電が新しくなったぐらいで状況は変わってないよね。どの家でもこうなっている。つまり日本人はこれだけ物と一緒でないと生活できない人種なんだね。そして、こういう人たちを相手に僕は設計していくんだと思ったわけ。設計する時にお施主さんにまず物のリストを書いてもらう。今度新しく家建てた時に何を持っていきますかって。するとやっぱり物凄い量が出てくる。ミース・ファン・デル・ローエとか聞いた事あるよね?収納とかあんまり無くてスカーっとしてる。だから本音を言うと綺麗な美しい設計をしようと思ったら、物なんて持ってきてほしくないわけなんだけど、こういう現実がある。ではどう折り合いをつけるかっていうことになるんだけど、例えば物を持って来させないやり方もあるよね。だけど色々な国の集落を訪れて、生活の大切さを見てきた僕には、それは言えない。

(*4)

物はその人の人生が詰まったようなものじゃない?建築を上位に置いて、持ってくるなとは言えない。かと言って、ミースみたいな空間を作ってそこに収納庫を作るとなんか中途半端になってしまう。ある時、収納がなかったら成立しないような家の作り方をすればいいんだということをひらめいたんです。今から15年ぐらい前に大阪で設計したのがこの家(*4)で、2つのコンクリートのフレームに木造が寄り添ってるという作り方をした。そこに屋根がかかっているんだけど、このコンクリートのフレームが収納化していて、収納が屋根を受けている。収納が骨組になっていて、この家は収納がないと成立しない。この家では帯のように収納が繋がるんで「収納帯」って名前をつけたんです。

この2つの収納帯の奥行きが違うのわかる?収納を分類すると2つに分けられて、個人の持っている物と皆で使う物。個人が使うものって布団や衣類だったりするから結構奥行きがいる。また、もう一方は扇風機とか皆で使う奥行きの浅い収納で、これは吹き抜けのリビングに面するようにして、リビングから使えるようにした。またこの家では収納帯によって領域を分けている。アプローチ部分から、家族全員が使うスペースがあって、さらにトンネルの収納をくぐって、その奥にそれぞれのプライベートスペースというように、収納帯によって領域を3つに分けるようにした。

(*1)

(*2)

(*3)おびただしい数の物があふれる

─海谷:収納で繋がっているっていうイメージですよね。

阿久津:そうそう。初めの話に戻ると、これだけ物がある現実に対してどう戦略を練るかということですが、まず先に物の行き先を決めてしまって、収納以外はフリースペースとして自由に使えるようにしてはと考えた。一番極端にそれをやった例が僕の家なんだけど、全体はコーポラティブ形式のマンションで、外側のラインっていうのは殆ど決められているから中をどうにかするしかない。ここに収納帯が二つあるんだけれど(*5)、殆どの物をまずここに入れてしまう。冷蔵庫・テレビ・洗濯機・トイレ・お風呂・食器庫とかね。

二つ収納帯があると、その間に隙間が出来るじゃない。うちは僕と嫁さんの二人暮らしで、この二つの収納の両側に建具がついていて、この細い隙間のようなところがベットルームになっているわけです。ここは幅が1.5mしかない廊下みたいな空間で、狭いけれど距離が近いのでとても便利に使える。テレビも寝室の方に持ってきて、入口の2か所をシャットアウトすると閉じたプライベートな領域になり、外側はオープンな領域がとれるからこちら側を事務所やリビングとし、スタッフだったり愛犬がぐるぐるまわったり出来る(*6)

収納帯によって分けられた2つの領域に、私室と公室って名前をつけた。私室っていうのが簡単に言うと僕と嫁さんだけの部屋で、公室は誰でも自由に入れるスペースということです。地下扱いではあるけど中庭があることで光が入るし、さっき長い路地を回ってもらったけど、湿気の問題があったのでここに風を通すことで、寝室も換気ができるようにした。

(*5)

(*6)

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阿久津友嗣(あくつともつぐ)

□プロフィール
 1958年   栃木県生まれ
 1981年   法政大学工学部建築学科卒業
 1984〜85年 ヨーロッパ旅行
 1985〜87年 REA建築工房
 1987年   あくつ設計所設立
 1992年〜  阿久津友嗣事務所に改称
 2004年〜  大阪市立大学非常勤講師
□おもな受賞
 「北畠邸」で第15回住まいのリフォームコンクール部門優秀賞
 「赤穂の住宅」で第6回赤穂市都市景観賞
 「つなね2-01」で第49回大阪建築コンクール特別賞 
  2005年 つくば田園都市コンセプト住宅設計競技2等入賞
 「生駒の住宅」で第53回大阪建築コンクール大阪府知事賞

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